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【要約】動機づけのマネジメント 著者 横田雅俊

動機づけのマネジメント
 

動機づけのマネジメント ―最高のマネジャーがやるべきたった1つのこと

著者
横田雅俊

 
 
要約
 

近年、企業間競争が激化し、労働力人口が減少する中、経営資源としての一人ひとりの人材の重要性は高まっている。そこで多くの企業では、社員の「モチベーション」をいかに高めていくかが課題となっている。各人のモチベーションに火をつけるためには、人を行動に駆り立てる「動機づけ」の技術が必要だが、現実には、若い世代の仕事観の変化などにより、動機づけも一筋縄ではいかない。
例えば、今の部下世代は、一般的に「成果主義」的な金銭的報酬よりも精神的な充足を、自己成長や自己実現よりも、まわりに認めてもらう「承認欲求」が強い傾向があるという。マネジャーはこうした時代性に合わせて動機づけをする必要があるのだ。そこで本書では、ステップを追った動機づけの技術や、あきらめている人への動機づけ、部下の信頼を得る技術、チーム全体の動機づけなどを解説しながら、動機づけマネジメントの全体像を明らかにする。

営業組織に限らず、やる気が見えない部下に悩む方や、より強い組織をつくりたいマネジャーは、ぜひご一読いただきたい。実践的なヒントが多数見つかるはずだ。著者の横田雅俊氏は外資系企業で世界トップセールス、東京本社マネジャーとして活躍後、営業に特化したコンサルティングファームを設立、数多くの企業の営業力強化に携わる。

要約

なぜ「行動管理」では結果が出ないのか

営業の世界にはマネジメント手法の流行がある。いまの上司世代が若手のころ、営業組織は「結果管理」でマネジメントをしていた。結果とは売上のことで、上司は月末や期末の目標予算を睨みながら、「今月は○万円足りない。なんとしても契約を取ってこい」と部下にはっぱをかけていた。

しかし、同じ目標でも、達成できる部下とそうでない部下がいる。両者の違いは、結果を出すための行動にあるのではないか。そのような発想から生まれたのが「行動管理」だ。管理指標を、売上という結果から、訪問件数やアポ件数という行動量にシフトさせた。

さらに近年は、行動量だけでなく、契約を取るために必要な工程を踏んでいるかという「プロセス管理」にシフトしつつある。初回訪問でヒアリングをして、何回目かの訪問でキーマンヘの提案をするというように、行動の中身を管理するものだ。

ところが、新しい管理手法にも限界はある。例えばプロセス管理も、やるべき行動が決まっているせいか、それをこなすことが目的化し、「決められたことはきちんとやりました」という浅い営業活動が目立つようになってきたのだ。

その現実を目の当たりにして、新たに考えるべきなのが「動機」だ。同じ量、同じプロセスで行動しても、浅い動機で動いている人と、深い動機で動いている人では成果が違う。もしそうであれば、社員に深い動機づけができることが、良いマネジャーの条件なのではないか…このような観点から浮上してきたのが「動機づけマネジメント」だ。

動機が強いと、成果が変わる

なぜ動機が強いと、結果に結びつくのだろうか。例えば、お気に入りの服がキツくなってきたからダイエットする人がいたとしよう。サイズの合う服を買い直すこともできるので、動機としては弱い動機と言える。一方、医者にメタポと診断され、実際に生活習慣病にかかってしまった人は、ダイエットしなければ命にかかわるから、強い動機と言える。

両者がダイエットを始めたとき、どちらも食事の量を減らすかもしれないが、動機が弱い人は「少しくらいなら」と甘いものに手を出しがちだ。一方動機が強い人は真剣に取り組み、長続きする。行動の質を高めて、さらにそれを継続的に行えば、当然、成果は出やすいのだ。

動機は強さだけではなく、深さも考慮する必要がある。動機とは人を行動に駆り立てる理由であり、深さを左右するポイントは「欲望」ではなく、自分のためか、他の人の益のためか、にある。「みんなに好かれたい」「お金をたくさん稼いで自慢したい」などは根源的な欲求だが、ある程度満たされてしまえば、そこから先は行動を促すエネルギー源にならない。

一方、「他の人や全体のため」という理由は、たとえ自分が満たされても、周りが同じように満たされているとは限らないため、継続性がある。だから上司は、欲望に火をつけるような動機づけではなく、部下以外の誰かのメリットになるような動機づけをしていく必要がある。

例えば「頑張れば出世して給料が上がる」ではなく、「給料が上がれば、生まれたばかりのお子さんが、将来大学に進学したい、海外に留学したいといったときに、自由に行かせてあげられるくらいの経済力が身に付くね」というように、本人以外の幸せを中心にしたほうが、動機としては深く継続性のあるものになるのだ。

部下が深く、強く動機づけされているかどうかは、具体的な指示を出すとわかる。上司が「○○という方針で仕事をしたい。それに沿って営業活動してほしい」などと指示したとき、普段からそのことについて深く考えていれば、具体的な疑問や反論などが出てくるはずだ。

目立った反応もなくただ聞いているだけの部下は、一見聞き分けがいいので見過ごしがちだが、実は面従腹背の厄介な状態だ。みなさんの部下がどれくらい強く動機づけされているのか。まずはそれを見極めることが大切になる。

正しく動機づけするための5つのステップ

部下の動機づけに焦りは禁物だ。動機は内発的なもので、無理に押しつけてもうまくいかない。部下自身が納得して動機を自分のものにするには、次の5つのステップが必要になる。

 

①部下の価値観を認める
上司がまずやるべきなのは、部下の価値観を知って認めることだ。部下世代は承認欲求が強く、仕事でも周囲から認められることを望む傾向がある。部下の価値観を認めていない上司は、自分の価値観を押し付けたり、「彼にはまだ無理だ」などと言って途中で匙を投げてしまう。価値観が違っても、それぞれが仕事に前向きに取り組めるようにするのが上司の務めだ。

では、部下のことをどれだけ知っていれば、部下の価値観を理解したことになるだろうか。私はコンサルティングの現場では、「部下のいいところを具体的に30個書いてください」とアドバイスしている。部下を自分の駒程度にしか考えてない上司は10個も書けない。

 

②現状分析と課題共有
次は部下一人一人の現状の実力を分析して、その結果を共有する。ゴールから逆算して、いま何が足りていないのかを明確にするためだ。いま自分に足りていないものを切実に欲するように導くことが、上司が行うべき動機づけなのだ。

特に重要なのは、部下の「できてるつもり」をなくすこと。例えば「顧客の一歩先回りをして提案する」という方針は、顧客の潜在的ニーズを顕在化させるという意味だが、部下は単に早く提案すればいいと勘違いし、できていると思い込んでいるかもしれない。認識のズレをなくすには、両者で現状を分析して、結果を共有することが重要なのだ。

 

③ゴールの共有
動機づけを大きく左右するのが、ゴールの設定だ。ゴールは、取り組むテーマによって様々で、「大型の案件を取る」といった具体的な目標でもいいし、「最年少役員になる」「独立して会社を立ち上げる」といったキャリア上の目標のこともある。さらに「わが社の製品で社会を変える」という壮大な目標も考えられる。

ゴールは、本人が本気になれることが第一条件であり、上司の役目は部下が気づいていない情報や見方を示して、視野を広げてあげることだ。部下自身が気づいていない魅力的なゴールを提案する。ゴールが決まったら、数値で定量的に示せるものは示し、いつまでに到達するのかを決める。

 

④アクションプランの策定
目指すべきゴールが明確になれば、現状とのギャップが見えてくる。ゴールが深く動機づけされていれば、このギャップを埋めようという思いも強くなるが、そこに至る道筋が明確でないと、人はチャレンジする気にならない。ゴールに到達するには、いつ、何を、どのようにやればいいのか。それらを具体的な計画に落とし込むことが大切だ。

 

⑤フォローアップ
アクションプランまでお膳立てしても、動機づけマネジメントはまだ終わらない。たとえ順調に行っていたとしても、定期的なフォローは必要だ。部下世代は価値観の押しつけを嫌うが、放置されることも嫌い、上司が自分に関心を示していないと思うと、やる気を失ってしまう。これらの5つのステップを経て、部下が貧欲にゴールに向かう姿勢を見せ、さらにその姿勢を継続させることができたら、動機づけは成功といえる。

動機づけされた最強チームをつくる

部下が動機づけによってパフォーマンスをあげても、個の力ではできることに限界がある。今やどの仕事も、チームや組織内で連携して協力し合わないと、仕事を前に進めることができなくなっている。では、チームに対してどのような動機づけを行うべきか。それは、チームの目標を掲げ、そこに向かって協力し合う理由=動機を全員で共有することだ。

しかし、動機の設定は簡単ではない。例えば、ある人は「自分の成長」、ある人は「経済的に豊かになる」、ある人は「顧客を喜ばせる」といった職業観で仕事に取り組んでいたとして、この三人の動機には共通点がないため、最大公約数的なものを導き出すのは困難だ。仮に共通点があっても、三人の動機を足して三で割れば、みんな納得できるわけではない。

だから、チームの動機は、それぞれの動機を飛び越えたところに設定すべきだ。部下の多くは経験が浅く、想像の範囲が限られている。そこで上司はメンバーが思い描く範囲外のところに高い視点から動機を設定して、メンバーの想像の範囲を広げてあげるのだ。

例えばチームの力を結集すれば、業界全体を盛り上げることができるかもしれない。部門を越えて組織の力を発揮させれば、業界どころか社会全体に影響を与えられる可能性もある。上司はチームに対する動機づけを通して、部下にそのことを気づかせるべきだ。「このチームで業界の慣習に風穴を開けて、活性化させよう」というように動機づけをして、部下により大きな世界を想像させるのだ。私はそれを「一歩先のリーダーシップ」と呼んでいる。

チームの一体感が醸成されると、実は個の力も高まる。最近の部下世代は自分の存在を認めてもらえる居場所を求めて働く傾向がある。一体感のあるチームは居場所として魅力的で、このチームで認めてもらおうという思いを強くし、積極的に仕事に取り組むようになるのだ。

チームとしての一体感をつくり出す具体的な方法には、「共通のキーワードを使う」「役割分担を明確にする」「結果ではなく、プロセスを共有する」「全員参加の場をつくる」などがある。また、強い絆で結ばれた組織も、負けが込み始めるとしだいにばらばらになっていく。逆に連戦連勝の組織は放っておいても人がやってくる。勝利は求心力のもとなのだ。

 

 

 

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