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【要約】100年予測 著者 ジョージ・フリードマン

100年予測

100年予測

著者
ジョージ・フリードマン

 
 
要約
 

本書は地政学上の観点から、100年後の世界を予測しようという大胆な試みを行った一冊である。その予測をひとことで表すならば、「21世紀こそがアメリカの時代になる」ということになる。アメリカの先行きに対する不安が強まる今、なぜアメリカの時代の幕明けなのか。緻密なデータと歴史的事象をもとに大胆なシナリオが明らかにされる。
著者ジョージ・フリードマンは大学で政治学の教鞭を執りながら、情報機関「ストラトフォー」を立ち上げた人物。ストラトフォーは1999年のコソボ空爆、2001年の同時多発テロ事件とそれに続くアフガニスタン侵攻など、特にアメリカ外交の転機に的確な分析や予測、提言を通して指導力を発揮し、「影のCIA」の異名を取るほど各界に大きな影響力を誇る民間企業。

要約

本書の狙い

本書の狙いは、未来がどのようなものになるのか、その感触を伝えることにある。従って本書では、地政学、科学技術、人口動態、文化、軍事における動向をつきとめ、今後起こり得る重大な出来事を明らかにすることを試みる。

未来について唯一確信をもって言えるのは、「そこでは常識が通用しなくなる」ことだけだ。歴史のパターンは、単純な力に支配されているのではない。国際関係において、いま目に映る世界は、20年後に目に映る世界とはまったく異なるのだ。

その点において、従来の政治分析による未来予測は想像力が著しく欠落している。誰の目にも明らかな、強力な長期的変化に目が向けられていないからである。

例えば、20世紀前半に起こった紛争のほとんどが、ヨーロッパにおけるドイツの地位を争点としていた。戦争がいつ、どこで起こるかを予測することはできなくても、戦争が必ず起こることは誰の目にも明らかで、実際ヨーロッパでは多くの人がそう予測していた。

また、アメリカとロシアの台頭は、19世紀に予見されていた。このように20世紀の初めにあっても、一定の秩序といくらかの幸運さえあれぱ、この一世紀の大まかな輪郭を予測することは可能だったのだ。

21世紀のとば口に立つわれわれは、この世紀の要となるような出来事、20世紀のドイツ統一にも匹敵する一つの出来事を特定しなくてはならないのだ。

21世紀

ヨーロッパ帝国の瓦礫やソ連の残骸が片づけられた後も、なお圧倒的な力を持って存在し続ける強国が一つある。それは、アメリカ合衆国だ。現在同国は、世界中で失態を演じているようにも思われる。だが、アメリカは経済、軍事、政治のいずれをとっても世界最強の国であり、そのパワーに本当の意味で挑戦できる国などない。

過去500年間、国際システムの中心はヨーロッパにあり、北大西洋を制する国が、ヨーロッパヘの航路とヨーロッパから世界に向かう航路を制した。しかし、1980年代初めに史上初めて太平洋の貿易額が大西洋に並び、北大西洋はもはや要ではなくなった。

いまや北大西洋と太平洋の二つの大洋を制する国こそが、世界貿易体制と世界経済を制することができるのだ。だが、海軍力を構築し、それを世界中に配備するには、莫大なコストがかかる。

そのため支配する必要のある海洋に面していることが、世界を支配する条件となる。かくして北米大陸を支配する国が、世界覇権国の座を事実上保証されたのである。そして、その座に就く国は、少なくとも21世紀の間はアメリカ合衆国である。

そのことから、21世紀にはアメリカの行動を抑え込むために同盟を形成しようとする第二勢力と、その足並みを乱そうとして軍事行動を仕掛けるアメリカとの間に、幾多の衝突が起こるだろうと予測する。アメリカ・イスラム戦争はすでに終局を迎えようとしており、次の紛争が目前に迫っているのだ。

ロシアはかつての勢力圏を回復しつつあり、アメリカに挑戦するだろう。だがロシアには勝つ見込みがない。深刻な国内問題や人口の激減、貧弱なインフラを考えれば、ロシアが今後長きにわたって存続する見通しは薄い。

アメリカの次なる挑戦者は中国である、という予測については懐疑的だ。第一に、中国は物理的に著しく孤立した国で、第二に中国は何世紀も前から主要な海軍国ではない。第三に中国は本質的に不安定だからである。

一方で、世紀半ばの他の強国の台頭も予測できる。第一が日本である。日本は資源に乏しく輸入依存度がきわめて高い点で、最も脆弱な国でもある。軍国主義の歴史を背負う日本が、平和主義的な二流大国のままでいるはずがないし、そのままでいるわけにはいかないのだ。

第二が、現在世界第17位の経済規模を有するトルコだ。経済力と軍事力ではすでに地域最強を誇るトルコだが、今後さらに力を蓄えるにつれて影響力を強めていくだろう。

最後がポーランドだ。これには二つの要因がある。第一が、ドイツの衰退である。第二に、ロシアの東方からの圧力だ。それに対してアメリカが、莫大な経済・技術援助を通してポーランドを支援するだろう、というのが著者の考えだ。

アメリカの基本戦略

アメリカには、その原動力をなし、外交政策を動かしている基本戦略がある。どんな国にも基本戦略はあるが、すべての国が戦略目標を達成できるとは限らない。しかしアメリカは、戦略目標のほとんどを達成している世界でも稀な国家なのだ。

具体的には、アメリカには5つの地政学的目標があり、それらが基本戦略を推進している。5つの目標を、スケール、野望度、難易度の低い順に説明すると下記の通りとなる。

 

1.アメリカ陸軍が北米を完全に支配すること
アメリカはアレゲーニー山脈とロッキー山脈の間の広大な土地に領土を拡げる必要があり、これを達成したことで、世界でも有数の肥沃な農地を手に入れることができた。かくしてアメリカは、いかなる国の挑戦も許さない、広大で豊かな国になった。

 

2.アメリカを脅かす強国を西半球に存在させないこと
北米を確保すると、当面の脅威として南米だけが残った。しかし南米が一つの国家として統一される可能性は低い。従って、南米諸国の中からアメリカに脅威をもたらす国が現われる可能性は少ない。

 

3.侵略の可能性を排除するため、アメリカへの海上接近経路を海軍が完全に支配すること
アメリカは西半球を確保した19世紀末以降、自国の境界線に向かうシーレーンに外国の海軍を入れないことを重視してきた。アラスカを買収し、ハワイを併合したことで、艦隊に物資を供給する停泊地を排除し、敵艦が西方から大陸に接近する脅威を阻止できるようになっている。

 

4.アメリカの物理的安全と国際貿易体制の支配を確保するため、全海洋を支配すること
第二次世界大戦終結時に、アメリカが世界最大の海軍を保有し、さらに世界各地に海軍基地を擁していたという事実が、世界のありようを変えた。アメリカ海軍はいかなる航洋船をも意のままに見守り、遮り、沈めることができる。

 

5.いかなる国にもアメリカのグローバルな海軍力に挑ませないこと
世界中の海洋を支配するという、前例のない偉業を達成したアメリカは、当然ながらその支配を維持したいと考えた。これを最も簡単に行なう方法は、他国に海軍を構築させないことである。

一方では海軍を持たない国に海洋へのアクセスを確保してやり、他方では仮想敵国を地上戦主体の紛争に釘付けにし、陸軍に軍事予算を吸い上げることで、海軍に投入できる予算を残させないようにしたのだ。

人口爆発の終焉

世界が深刻な人口爆発に直面していることは、数十年前から一般認識になっている。人口増加を抑制しなければ、食糧、エネルギー、物資という形でますます多くの資源が必要になり、それがひいては地球温暖化や生態系の激変をもたらすと考えられた。しかしこの図式はもはや成り立たない。

国連によれば、2000年から2050年にかけて世界人口は増加するが、過去50年間に比べれば半減するという。また、2050年には世界全体の出生数は2.05人に減少し、世界人口を一定に保つのに必要な2.1人を下回る。入手可能な最高のデータを持つ国連が、2050年までに人口が安定するか、劇的に低下すると予測しているのだ。

これまで人口の減少は、国力の低下に直結した。ヨーロッパに関しては今後もそうであり、それ以外の国、例えばアメリカなどにとっては、今後100年に渡り政治的勢力を維持するために人口水準を保つか、減少した人口を技術力で補強することがカギとなる。

人口破綻はあらゆる国に影響を及ぼすだけでなく、そこに暮らす人々のライフサイクルにも影響を与える。人口の減少は、戦闘可能な兵力から、労働力人口、国内の政治闘争に関与する人の数、人々の生き方、ひいては国家の行動をも決定づけるのである。

 

 

 

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