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【要約 】『多動力』 著者:堀江貴文

『多動力』

多動力

堀江貴文
 これまで信じてきた価値観がゴッソリ根っこから覆される本との出合いは久々だ。現在、IoTなどのテクノロジーの進展により、あらゆる産業のタテの壁が溶けて消失しつつある。そんな時代に求められるのは、各業界の垣根を軽やかに越えていく「越境者」だ。越境者には、次から次に好きなことをハシゴしまくる「多動力」が欠かせないと著者はいう。

 著者の堀江氏は、石の上にも三年、完璧主義といった価値観をぶった斬り、180度の転換を図っていく。これからの時代で大切なのは、「自分の時間」を生きることだ。仕事を効率よく進める工夫をし、原液のように濃厚なコンテンツをつくることで、自分の分身が仕事をしてくれるようになる。「いやいや、堀江さんだからできるんでしょう?」と一蹴するのは早計だ。本書『多動力』に紹介されている考え方は、とかく制約の多い会社員でも明日から実践できるものばかりである。

 堀江氏の著書の面白さは、「誰かに言葉にしてほしかった真実」が突きつけられ、世界との対峙の仕方を見直すチャンスを得られる点にもある。一見バラバラな活動を、あれもこれも試す生き方だってアリ。本書を読めばそう思わずにはいられない。

 今の生き方に疑問がある方は、新しい生き方・働き方の決定版として迷わず本書を読んでいただきたい。人生を1秒残らずワクワクで埋め尽くしたくなるにちがいない。 

要約

(1) 今後は「越境者」が求められる。

今後は業界の壁を軽やかに飛び越える「越境者」が求められる。

越境者に必要なのは、次から次に好きなことをハシゴしまくる「多動力」である。

◇三つの肩書きで、あなたの価値は1万倍になる

 あらゆる産業の「タテの壁」が崩壊した今、一つの肩書きにこだわっている人は、その他大勢に埋もれてしまう。ダイヤモンドの価値が高いのは、それが美しいからではなく、珍しいからだ。

 元リクルート藤原和博氏は「レアカードになる方法」を提唱している。一つのことに1万時間、つまり1日6時間として5年間取り組めば「100人に1人」の人材になれるという。ここで別の分野に1万時間取り組めば、「100人に1人」×「100人に1人」の掛け算で、1万人に1人という貴重な人材になれる。さらに別の分野に1万時間かければ、100万人に1人の人材が誕生し、結果的に価値が上がる。三足のワラジは二足のワラジ以上の相乗効果を得られる。

 ポイントは、似通ったワラジよりも異なるワラジを掛け合わせたほうが希少性を高められるという点だ。複数の肩書きを掛け算し、レアな存在になろう。


(2) 多動力を発揮するには

多動力を発揮するには、何か一つのことにサルのようにハマり、飽きたらすぐに次に移るとよい。

◆一つのことをコツコツやる時代は終わった
◇寿司屋の修行なんて意味がない

 あらゆるモノがインターネットにつながることによって、全業界のタテの壁が崩れ去り、フラットに開かれた社会が誕生した。これからは、業界の壁を軽やかに飛び越える「越境者」にこそ、チャンスがあるという。「越境者」に必須となる能力が、次から次に好きなことをハシゴしまくる「多動力」だ。

 修行や下積みなど、苦しいことを我慢して行うという美学から、日本人は解放されたほうがよい。寿司職人が修行に何年も費やすのは、貴重な時間の無駄遣いでしかない。現に、大阪の「鮨 千陽(ちはる)」の土田秀信店長は、専門学校で3ヵ月寿司づくりを学んだだけで、開店からたった11ヵ月にして『ミシュランガイド京都・大阪2016』の「ビブグルマン」部門に選ばれるという快挙を成し遂げた。

 これまで、情報や技術、権利は、限られた人間の専売特許として囲い込まれていた。しかし、インターネット出現後は「オープンイノベーション」が前提となっている。こうした時代においては、情報収集に貴重な時間をかける必要はなく、そもそも情報自体の価値はゼロといってよい。みんなで情報を共有し、それをもとに新しい発想や発明を積み重ねるほうが技術の進化は速くなる。今後必要なのは、とにかくチャレンジする行動力と、アイデアを進化させる力なのだ。

◆サルのようにハマり、鳩のように飽きよ
◇まずは、一つのことにサルのようにハマれ

 多動力とは、異なる、いくつものことに次から次へとハマる力である。その源泉となる好奇心と集中力を培い、何百もの物事にハマるには、まずは何か一つのことにサルのようにハマるとよい。

 バランスを重んじる日本の教育は、子どもの好奇心と集中力をそぐようにできている。例えば給食の時間に「三角食べ」を指導するのは、無理やり子どもたちを「バランス信仰」に洗脳しようとしていたとしか思えない。しかし、ノーベル賞をとるような研究者や医師など、頭一つ抜きん出た人物は総じて、バランスを欠いた変人だ。こうしたことからも、子どもには平均的になるような教育をするのではなく、好きなことをとことんやらせておくほうがよいといえる。

 著者はゲームにハマった経験を、スマホゲームのアイデアの着想や、グルメアプリ、サロン運営などに活かしている。一つのことに夢中になり、根っこまで掘り下げれば、そのジャンルの真髄がわかり、あらゆるものに応用できるのだ。

◇飽きっぽい人ほど成長する

 飽きやすいというと、ネガティブにとらえられることが多い。しかしそれは、実は成長が速いことでもある。どの分野でも、80点までは簡単に到達できるが、100点満点を達成するには膨大なコストと時間がかかる。著者は80点をとれるようになったら、あっさり飽きてしまうことが多い。時間をかけて100点をめざすより、次のジャンルへ飛んだほうが新たな発見があると考えているためだ。

 飽きっぽい人は短期間にものすごい勢いで熱中しているため、人並み以上の知識と経験を身につけ、それを仕事の武器として活かせている。これからの時代に求められるのは、一度深くハマって、あっさりと次へ移り、80点とれるものをいくつももっている人である。


(3) 「原液」を作り出せ

原液のように濃厚なコンテンツを生み出すことで、それに熱狂した自分の分身が勝手に仕事をしてくれるようになる。

◇カルピスの「原液」をつくれ

 1日には24時間しかない。同じ時間の中で大量のアウトプットができる人と、そうでない人の違いは、努力や仕事量の差ではなく、「原液」をつくれるかどうかの差である。

 著者はテレビに出演する時間を絞りながらも、「テレビに出まくっている」という印象を人々に与えている。これは、著者がツイッターで炎上させた発言がテレビで取り上げられ、著者不在のままコメンテーターが議論をしているためだ。タダでCMを流してもらうくらいの効果が得られている。

 大事なのは、カルピスの原液をつくることである。濃厚な原液的コンテンツをつくれば、それをマスメディアやネットが薄めて大衆に届けてくれる。つまり、自分の分身が勝手に仕事をしてくれるというわけだ。

 味の薄いカルピスウォーターしかつくれない人生なんてつまらない。原液まみれの濃密な人生を歩むように意識すれば、自分の発言やアイデアに、他人が熱狂して働いてくれる。

◇教養なき者は奴隷になる

 原液をつくるのに必要なのは教養である。教養とは、時代が変化しても変わらない本質的なものを指す。

 原液となる、時代より先のビジョンを著者が提示できるのは、教養の賜物である。疑問に思うことは徹底的に掘り下げてきたそうだ。例えば、ライブドア事件で逮捕され、検察という組織の理不尽さを感じた経験から、著者は検察という組織を、その歴史から海外事例に至るまでとことん調べ上げたという。こうして、知識の幹となる教養を得られれば、枝葉となるさまざまな事象が理解できるようになる。そのうえで、目の前の仕事に教養を具体的に落とし込む意識をもちたい。

 また、骨格となる基礎教養を身につけておけば、「検索する力」と「質問する力」で、新しい知識をいくらでも補完できる。教養以外の情報や知識については、知らなくても「恥」でもなんでもない。すぐに人に聞いたり調べたりすればいい。
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◇バカ真面目の洗脳を解け

「全部自分でやらなければいけない」、「準備万端でなければいけない」。これらは思いこみにすぎない。中でも、「すべての仕事で100点をとらなければいけない」という思いこみは根強いものである。しかし、常に全力投球ではすぐに息切れしてしまうだろう。

 重要なのは、たまに手を抜くことである。試合中、常に全力疾走のサッカー選手は肝心のチャンスで100%の力を発揮できない。一方、超一流の選手は試合のうち大半をサボっていて、ここぞというときに得点を奪う。

 仕事に忙殺されている人は完璧主義をやめ、一度手をつけた仕事をサクサクと完了させる「完了主義」を意識しよう。そうすれば、大量のプロジェクトを動かせる。

◆自分の時間を取り戻し、自分の分身に働かせる
◇大事な会議でスマホをいじる勇気をもて

 他人にコントロールされている「他人の時間」を生きている限り、「自分の時間」を生きることは難しいだろう。多くのビジネスパーソンは、参加する必要もない打ち合わせに出るなど、無意味なルールに縛られている。それなら、打ち合わせ中にスマホで気になるニュースを読んだりLINEの返事をしたりするなど、「自分の時間」に引き戻したほうがずっと効率的である。「他人の時間」を生きるのは自分の人生に対して失礼ではないだろうか。

 上司から「話をしているときは目を見て聞け」とか「会議中にはスマホをしまえ」と言われても屈してはいけない。大事な会議であえてスマホをいじる勇気をもってほしい。

◆世界最速仕事術
◇すべての仕事はスマホでできる

 多くのプロジェクトを同時にこなし、多動力を発揮するには、仕事の生産性を上げる意識が欠かせない。著者は、関わっているプロジェクトのほぼ100%をスマホでこなしている。仕事の打ち合わせや指示出しなどは、プロジェクトごとにLINEやメッセンジャー、メールを使い分け、その場ですぐ解決している。そのため、仕事の積み残しもなくストレスもたまらない。

 仕事も遊びもコミュニケーションも、スマホで事足りる世の中になっている。わざわざ会社で仕事をする意味はない。「会社に行かなければいけない」、「直接会って話さなければいけない」。こうした時代にそぐわない考えを改めるだけで、仕事は一気に効率化できる。

◇仕事の速さはリズムで決まる

 大量の仕事をすばやくこなすために必要なのは、「速度」よりも「リズム」である。いきなり電話をかけてこられたり話しかけられたりすると、作業を中断せざるを得ない。メールを見て即返信する。LINEでピッピッとやりとりする。せっかく便利なツールを使っているのに、重い添付ファイルの開封に時間がかかると、リズムが途端に乱れてしまう。意味のない長文メールを送ってくる人も同様だ。人のリズムを狂わせる不協和音のような人とは極力つきあわず、ビートを刻むように仕事をパッパとこなすに限る。


(4) 人生に目的はいらない

人生に目的はいらない。ワクワクすることにハマれば結果はあとからついてくる。

◆人生に目的なんていらない
◇永遠の3歳児たれ

 多くの人は、大人になるにつれ、子供の頃もっていた多動力を失っていく。やりたいことではなく、やらなければいけないことをするよう矯正されるためだ。しかし、成功している起業家やクリエイターは、好奇心旺盛な3歳児さながら、興味があることに脇目もふらずまい進している。だからこそ、イノベーションを起こせるのだ。

 テスラ・モーターズCEOのイーロン・マスクは、服を着ている最中に次にやりたいことを思いついてしまうため、ボタンをとめられないという。だからこそ彼は、火星移住計画を立てるなど、常識にとらわれずに挑戦を続けられる。

 人は年をとると新しい刺激にふれられず、自分を変える柔軟性を失ってしまう。しかし、未知なる刺激に接し続けていれば、3歳児のような多動力をキープできる。しかも、テクノロジーの進化のおかげで、学びたい意思さえあれば、新しい知識をすぐに身につけられるようになった。つまり、マインド次第でいくらでも若返りが可能だといえる。

◇今を楽しむことがすべて

 将来の夢や目標なんて必要ない。面白い人たちと面白い時間を過ごした結果、アイデアが生まれ、仕事や遊びにもつながっていく。人は何かワクワクすることにハマれば、「忘我」の境地に達して時間を忘れ、熱狂的なまでに没入できる。そうすれば、目的はおのずと達成され、結果はあとからついてくる。このように、常に新しい自分へと生まれ変わっていくための原動力こそが「多動力」なのだ。

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