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【要約】シリコンバレー式 最強の育て方 人材マネジメントの新しい常識 1on1ミーティング 著者 世古詞一

シリコンバレー式 最強の育て方
人材マネジメントの新しい常識 1on1ミーティング

シリコンバレー式 最強の育て方 ―人材マネジメントの新しい常識 1on1ミーティング―

著者
世古詞一

要約
 

企業の課題はさまざまだが、社員の退職など「人」の問題は特に重大だ。そしてその原因の多くは、上司と部下のコミュニケーションの取り方にある。日本企業では、1対1の面談は評価面談くらいしかないが、シリコンバレーでは週1回の1on1(ワンオンワン)ミーティング(以下1on1)が当たり前に行われ、それが人材の流出を食い止めているという。
ビジネス環境や労働環境が激変しつつある日本企業にも、このやり方は有効であり、本書では、1on1の効果や具体的な導入手法、コツなどを一つひとつ解説する。1on1を取り入れていない企業によくあるのが「忙しい」「面倒くさい」といった理由だが、1on1には信頼関係の構築や働きがいの向上など、重要な組織的効果が多くある。1on1を実際に取り入れた企業の体験談からも、その効果の大きさがわかるはずだ。

著者は IT企業 VOYAGE GROUPの経営幹部を長く務め、「働きがいのある会社」中規模部門で3年連続第1位となった同社の1on1制度の設計から運用まで携わった人物。現在は1on1マネジメントのプロフェッショナルとして組織人事コンサルタントやビジネスコーチとして活躍。社内のコミュニケーション活性化や組織能力の向上、優秀な人材を確保したい経営者、マネジャー層の方々はぜひご一読いただきたい。

要約

個人に焦点を当てた「対話」が継続的な結果をもたらす

組織の課題は、人が育たない、優秀な人が辞めてしまう、チームに活気がない、など多岐にわたる。しかし、これらの問題を突き詰めていくと、実は根本的な原因はたった1つだ。それは「個人に焦点を当てた対話の不足」である。

コミュニケーションは密に取り、業務に焦点を当てたいわゆる「仕事の話」はしている上司が多い。しかし、実はこれはコミュニケーションというより、「結果を出すための情報交換」をしているだけだ。一方、個人に焦点を当てた対話の目的は、「部下との信頼関係づくり」や「部下不安の解消」や「部下の心身状態の確認」など、部下自身に関することである。

1on1ミーティング(以下1on1)の場では、まさにこの対話が行われる。1on1とは、上司と部下による1対1の定期的な対話の時間で、シリコンバレーでは、古くから1on1が行われてきた。その背景には、人種や宗教、価値観が異なる国だからこそ、対話の重要性を重んじてきたことがある。

日本においては、ヤフー株式会社が1on1に力を入れており、上司は直属の部下と週に一度、30分のミーティングを行う。これにより部下は「見てもらっている」という意識が芽生え、上司側も強制的に部下を「見る」ことで、部下の変化や考えを深く知るようになる。しっかりとした信頼関係が生まれれば、それが競争優位性にもつながっていくのだ。

1on1ミーティングにおいて話し合うテーマは大きく分けて2ステージ、7項目ある。「信頼関係づくりステージ」であるプライベート相互理解、心身の健康チェック、モチベーションアップ、「成長支援ステージ」である業務・組織課題改善、目標設定/評価、能力開発/キャリア支援、戦略・方針の伝達の7つだ。

 

1.プライベート相互理解

プライベート相互理解は、場を柔らかい雰囲気にするので、主に1on1スタート時点、あるいは途中で話を和ませたりするのに適している。部下から「聞き出す」のではなく「結果として話してもらえる」関係をコツコツと作っていくスタンスが重要である。

あまり自分のことを語りたがらない部下には、「自分の言いたくない、出したくない情報」をまず相手に出していくことだ。人は秘密の話やここだけの打ち明け話、悩みごとや失敗などの自己開示をされると、自分もオープンにしようという気持ちになり、相手との心の距離感がグッと縮まる。いかに自分なりの自己開示話を持っておくかが大事だ。

また、1on1は部下のための場であるため、「納得」ではなく「共感」のスタンスで臨む。この「共感」が「100%受け入れられている、何を言っても大丈夫という安心安全の空間」をつくる。逆に、この場が「嫌」な場という感覚を部下に持たせてしまうと、1on1には致命的だ。毎回部下が理論武装をして1on1に臨むと、緊張して疲弊していってしまう。

 

2.心身の健康チェック

心身の健康チェックとは心身の状態や業務量、残業時間などを確認することで、このテーマは毎回必ず確認する。確認項目は体調確認と業務量の確認の2つだ。「最近寝つきが良くない」「早めに起きてしまう」「疲れやすい」「だるい」。これらはメンタル不調の最初のサインであり、こう答える人は意外に多い。このような回答があった場合には、少し深堀りをして原因を聞こう。

「残業が多い(業務量が多すぎるか確認)」「帰るのが早い(業務量が適切か確認)」など、本人ではどうしようもなくなっている状況についても確認する。必要であれば別途時間を取り、タスクの洗い出しや効率化、さらには優先順位をつけて、やることとやらなくていいことを分けるなどを、一緒に行うことだ。

 

3.モチベーションアップ

1on1の大きな成果の一つは、部下のモチベーションが上がったかどうかだ。「モチベーションアップ」には、マイナス面を最小化すること、プラス面を最大化することの2種類がある。

まず、マイナス面を最小化するには部下の話を聴ききることだ。しっかりと聴いてもらった場合、部下は「すっきりしました」と言う。中途半端に説得をしてはいけない。極論を言えば、部下からの信頼は「アドバイスをすれば下がり、最後まで話を聴ききれば上がる」のだ。

次に、モチベーションアップするのに効果的なのは、やはり「ほめる」ことだ。まず、毎回の1on1でやるのは、前回から今回までの間で発見した部下の良い言動や結果について伝えること。小さなことで構わないので、Facebookの「いいね」の感覚で気軽に言えるようになろう。軽視しがちだが、実はこれは一生ものの大きなマネジメントスギルになる。

普段自然にほめていない人ほど、ほめることに違和感を覚えるが、その場合私は「ほめなくてもよいので承認してください」と言っている。「ほめる」というのは、話し手自身が本当にそう思っていないと気恥ずかしさがある。

一方で承認は、「最後までやりきったね」「いつも一番に電話を取るね」というように、事実を認め、それをそのまま伝えることだ。話し手は客観的事実を伝えるだけなので「嘘」ではなく言いやすいし、受け手も受け取りやすく、円滑なコミュニケーションが行えるのだ。

 

4.業務・組織課題の改善

多くのマネジャーが、忙しいと言って1on1に二の足を踏んでしまうのは、重要度も緊急度も高い仕事、もしくは重要度は低いが緊急度が高い仕事が多いからだ。だが、緊急度は低いが重要度は高い仕事に手がつけられれば、計画的に仕事が進められるようになる。

部下との対話も同様に、緊急度は低いが重要度が高いものについて扱うことだ。1on1では数字や具体的案件の進捗確認などの目先の成果に関することは扱わない。

将来起こりうるリスクを先回りして考えたり、業務をもっと効率的なものにしていくアイデアを出すのだ。それによって部下の視野を広げていくことは、目先の結果を出すためにはそれほど重要ではないが、中長期的に結果を出し続けるためには必要なことだ。

 

5.目標設定/評価

評価は、マネジャーにとって非常に重たい業務の1つだ。しかし、この 1on1を重ねていくことで、自信を持って評価を行えるようになる。なぜなら評価で最も大切なことは、「正しい評価」ではなく「評価される側の納得感」だからである。

そのために、日ごろから短い期間で 1on1ミーティングを行い、物理的な接触頻度を増やして、目標へのフィードバックや承認を行う。部下特有の状況や想いを理解しない限り、部下は「自分を見てもらっている」という感覚を持てず、その状況で、いくらルール通りの「正しい評価」を行っても、部下にとっては納得できないものになっていく。

目標設定も同様に、正しい目標設定から、納得感のある目標設定に変えていくために1on1は不可欠だ。GE社がここ数年で始めた人事制度では、年に1回という人事評価を廃止し、制度の目的を「人事評価」から「従業員の能力開発」へと移行していった。

これにより、マネジャーは長い評価コメントから解放され、部下は短期の間に自分がどのように組織に貢献しているのかというフィードバックをもらうことになった。このようにプロセスに主眼を置いた人事施策が増えてきており、1on1の重要性は今後ますます高くなるだろう。

 

6.能力開発/キャリア支援

私たちは、業務をなんらかの行動を取ることで終わらせるが、そのときに自分のどういう能力が発揮されたかについてはあまり気にしていない。しかし、ある行動が取れるのは、自分の持つ能力が発揮された結果だ。

例えば、Aさんがある困難なプロジェクトにおいて、多くの人を積極的に巻き込みながら納期までにプロジェクトを終えた。この能力は「リーダーシップ能力」だが、本人はこの能力に無自覚で、次の機会に発揮できない可能性もある。そこで質問によって気づかせる。一度自分の中からその能力が発掘されたら、異なる場面でも活用することができるのだ。

また、上司は良かれと思って「将来何をしたいの?」と部下に聞くが、「特にない」という答えにネガティブな印象を抱き、結果部下のやる気をそいでいる現状がある。将来像がないという問題意識を持つのはいいが、悩みすぎて不安になって今がおろそかになるのは本末転倒だ。

マネジャーとして大事なことは、「やりたいことがない」部下を受け入れて、今に集中できていればそれでよしとすること。ただし、考えも変わるし、将来がだんだんと見えてくることがあるので、確認は必要だ。

 

7.戦略・方針の伝達

報連相(報告・連絡・相談)は、仕事がつつがなくいくように部下が上司にするものという解釈が一般的だが、私が知るデキル上司はこの逆のことを行っている。つまり、「逆ホウレンソウ」である。上司は、部下が知ることのない重要な情報を会議や上役の人から聞いてつかむ。デキル上司は、そこで得た情報を精査して、部下に公開していくのだ。

上の人しか出席できない会議は、自分が部の代表をして出ているという意識なので、部下たちに惜しみなく情報を分け与える。情報を与えられた部下は、材料を持てるので自分で考えられるようになって自ら動き出す。つまり、逆ホウレンソウができる上司は育成上手なのだ。

早い成長を期待するならばやはり情報をドンドン出していくべきだ。1on1が終わった後にも、部下に対して有益な情報や考え方があったならば、逆ホウレンソウをしてほしい。これは次の 1on1のときでもよいが、もっとタイムリーな場、ランチや席にいるときの雑談などでトピックを話していくのもよいだろう。

 

 

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