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【要約】急に売れ始めるにはわけがある-ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則 著者 マルコム・グラッドウェル

急に売れ始めるにはわけがある-ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則
 

急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則 (SB文庫)

著者
マルコム・グラッドウェル

 
 
要約
 

ビジネス書の要約メディア「BOOK-SMART」

本書は、流行現象を口コミによる感染ととらえ、そのメカニズムを説き明かした一冊である。ヒットを作り出すには膨大な予算が必要と考えられがちだが、そうとは限らない。ひとつの小さな変化でとてつもなく大きな結果を生みだすことが可能だからである。
「ティッピング・ポイント」や「少数者の法則」「粘りの要素」「背景の力」といったキーワードを用いながら、流行がつくられ広がっていくメカニズムを斬新な視点から考察している点が本書の特徴である。マーケティングに関心を持つ人にとっては必須の知識が詰まっている。

要約

ティッピングポイントとは何か

ティッピングポイントとは「あるアイディアや流行もしくは社会的行動が敷居を越えて一気に流れ出し、野火のように広がる劇的瞬間」である。

かつてニューヨーク市近郊の貧しい地区では殺人事件や重罪事件が多発していたが、ある臨界点を過ぎたあたりで犯罪発生率に劇的な変化が生じ、5年間で殺人事件が三分の二も減少した。

警察の治安対策の改善は確かに重要な要素だが、状況が改善されるにつれて事件数が徐々に減っていったわけではなく、ある地点で激減したのだ。このような不可思議な変化を理解するには、それを伝染病のようなものとして考えるのが一番だ。アイデアや製品、メッセージ、行動などはウィルスのように広がっていくのである。

ニューヨーク市の例は典型的な伝染病的現象だ。第一に感染的であり、第二に小さな原因が大きな結果をもたらし、第三に変化が徐々にではなく劇的に生じるという特徴がある。この第三の考え方こそティッピング・ポイントという発想の核心である。

梅毒のような伝染病が一気に広がっていくときには、そこになんらかの原因があり、なんらかの変化が該当地区で生じている。この変化の3つの要因を、「少数者の法則」「粘りの要素」「背景の力」と呼ぶ。この3原則は、伝染現象を理解するための方法と、ティッピング・ポイン卜に達するための指針を与えくれる。

爆発的感染、その3原則

原則1 「少数者の法則」

マスコミが発達した現代においても、口コミは人間の意思疎通のもっとも重要な形式である。しかし人々があらゆる種類の情報を他人に伝えても、それらが口コミ伝染として点火する場合はごくまれだ。実は社会的伝染が成功する鍵は、ある特別な社会的資質を備えた人物が関与しているかどうかにかかっているのだ。

1960年代末、心理学者スタンリー・ミルグラムが発見した「関係の六段階分離説」は、すべての人が自分を除くすべての人とちょうど六段階でつながっているのではなく、ごく少数の人がわずかな段階でその他すべての人とつながっていることを意味している。

つまり、残りの人々はこの特別な少数者を通じて世界とつながっているのだ。この特別な少数者「コネクター」は、知り合いが多く様々な世界や文化領域を股にかけた活動をしている。

それゆえ私たちは新しい機会を得ようとする時、コネクターの力を借りる。それは発想なり製品なりが、コネクターに近づけば近づくほど力と機会が増えることをも意味し、口コミはコネクターの口を経た時に突如始まるのだ。

社会的伝染に関わっているのはコネクターだけではない。コネクターに新しい情報を伝える情報の専門家「メイヴン」や耳にした情報について説得する技術を持った「セールスマン」も必要である。

原則2 「粘りの要素」

社会的感染では情報や感情を伝播させるメッセンジャーが重要な役割を果たす。しかし言うまでもなくメッセージの内容も重要である。そこで問われるべきメッセージの特別な性質こそが「粘り」である。そのメッセージは変化を生み出すほど、誰かに行動を促すほど記憶に残りやすい(粘る)か?ということだ。

広告宣伝業界では、ある広告を憶えてもらいたいと思ったら、最低六回は繰り返さなければならないというのが鉄則だが、より巧妙かつ安上がりな方法はないのだろうか。

感染力の強い発想やメッセージを注意深く検討してみると、発想やメッセージを粘り強くしている要素が、往々にして一見すると取るに足らない些細なものであることがわかってくる。

1960年代に社会心理学者のレヴァンタールがおこなった、イエール大学の学部上級生に破傷風の予防注射を受けるさせる実験では、「恐怖度の高い」パンフレットと、「恐怖度の低い」パンフレットを渡した学生が予防接種を受ける割合には、ほとんど変化がなかった。

そこでレヴァンタールは大学の保健所の位置と予防接種を受付けている時間を記した地図をパンフレットに添付して実験をやり直した。すると、この小さな変更で予防接種率は跳ね上がった。

この調査では二つの興味深い結果が出ている。一つは、予防接種を受けた学生の内訳では、恐怖度の高いパンフレットを読んだ学生と、低いものを読んだ学生が同数だったことである。恐怖をあおるむごたらしい写真を見なくとも、学生たちは破傷風の危険と、自分たちは何をなすべきか承知していたのだ。

もう一つは、学部の上級生ともなれば保健所がどこにあるかすでに知っているだろうし、すでに何度か足を運んでいるはずだということである。つまり、破傷風の予防の機運を一気に広めるには、新しい追加の情報を雨あられと振りかけても無駄だということだ。必要なのは、情報提示の仕方にさりげなく、だが有意義な変更を加えることなのだ。

まず学生たちには破傷風菌についての知識を与えなければならないが、それに地図と診療時間についての情報が付加されると、パンフレットは抽象的な医療的知識――ふだん学校で受けているアカデミックな授業と違いはない――から、実践的かつ個人的な医療アドバイスへと変化する。そしてアドバイスが実践的かつ個人的なものになると記憶に粘るのである。

原則3 「背景の力」

暴力の伝染や犯罪の蔓延などという言葉があるが、はたして犯罪は商品や情報の場合と同じような規則に従って伝染するのだろうか。商品や情報の伝染が関与するのは一個一個の製品やメッセージという単純明快なものである一方、犯罪はそれぞれくっきりと見分けられるような事象ではない。

ここで考えたいのは「背景」の力である。「アイディアを伝播させる人」と「成功するアイディアの特徴」という二つの主題に勝るとも劣らず重要な主題だ。感染は、それが起こる時と場所の条件と状態に、敏感に反応するのだ。

ニューヨークの犯罪が伝染する流れを変える役割をはたしたものとして興味深いのは、「割れた窓」と呼ばれる理論である。犯罪学者のジェームズ.Q・ウィルソンとジョージ・ケリングが発案したこの理論は、犯罪は無秩序の不可避的な結果だと主張している。犯罪は自殺や喫煙と同じように感染的で、一枚の割れた窓から全地域に広がっていくことがありうる。

しかし、この場合のティッピング・ポイントは特殊な人物であるコネクターやメイヴンから始まるのではなく、落書きのような物理的なものから始まる。ある特定の行動を誘発する刺激は、ある特定の人物ではなく、ある環境の特殊な条件からはじまるということだ。

警察などが敢行した地下鉄の落書き清掃作戦や無賃乗車の撲滅作戦は、ニューヨーク市全体の犯罪率を著しく低下させるきっかけとなった。小さな生活環境犯罪の取り締まりが凶悪犯罪激減のティッピング・ポイントだったのである。

背景の力によれば、感染現象は直接的な環境の些細な要素に手を加えることによって、それを一気に傾かせることができる。何かを解決するのにまず大きな問題を解決するという必要はないのだ。

「150の法則」という背景

心理学者によると、人は物事の原因を考えたり何かの決断を下す場合、集団の中にいる時と一人でいる時とでは同じ質問でも答えが違ってくる。小規模で緊密なグループには、あるメッセージなり発想なりが持つ潜在的感染力を強化する力がある。

ただし一口に「グループ」といってもその規模はさまざまだから、ティッピング・ポイントに達しようとするならどの程度のグループがもっとも効果的なのかを知る必要がある。そこで用いるのが150の法則と呼ばれるものだ。

イギリスの人類学者ロビン・ダンパーは、人が霊長類の中で最大規模の集団生活を送っているのは、複雑な社会調整を扱えるだけの大きな脳を持っているからだとしている。さらにダンパーはその霊長類が最大どれくらいの規模の集団生活を営んでいるかを算出する公式を編み出し、それをホモ・サピエンスに当てはめ、ほぼ150人という結果を出した。

それは相手がどこの誰で、自分とどのようなつながりを持っているかを知りながら維持できる限界である。もちろん150を超えた規模のグループを構築することは可能だが、一体感を維持するために複雑な階級や規則・統制といったものが必要になる。

ダンパーによれば、150以下だと個人の忠誠心と直接的な対人関係を基本に秩序はおのずと維持され、行動も規則なしで統制できるという。それゆえそれぞれのグループを150というティッビング・ポイントの範囲内にとどめておく必要があるのである。

 



 

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