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【要約】「幸せをお金で買う」5つの授業  著者 エリザベス・ダン、マイケル・ノートン

「幸せをお金で買う」5つの授業 (中経出版)



ハーバード大学とカナダ・ブリティッシュコロンビア大学の気鋭の教授が、「お金」と「幸福」の関係に科学的見地からメスを入れた「お金の使い方」の教科書的一冊です。著者は自己認識と幸福を専門で研究し、心理学界で「新星」として注目されているエリザベス・ダン博士と、マーケティングの専門家としてTEDにも登壇し、若手ながら脚光を浴びるマイケル・ノートン博士。
「収入と幸福感が比例しない」、「幸せはお金で買えない」とは昔から言われていることですが、著者は、「世の中には、幸せになるお金の使い方と、幸せにならないお金の使い方がある」ことを豊富な研究成果から解き明かします。車や家の購入、長い通勤時間などの身近な事例を通して、「幸福感を感じる5つのお金の使い方」:

(1)経験を買う、

(2)ご褒美にする、

(3)時間を買う、

(4)先に支払って、後で消費する、

(5)他人に投資する、のそれぞれがわかりやすく説明されていきます。

著者がいうように「お金を貯める、殖やす」という類書は多くありますが、「使う」、それも自己投資などではなく、「幸福感」に寄与するような使い方を解説した類書はあまりなく、日常の生活や働き方、人生を考えるうえで非常に参考にできる内容だと思います。また、著者は、いたずらにストイックな思想を求めたり、「お金」を稼がない方が良いと主張しているのではなく、あくまで幸福度をもっと上げられる方法を提案しています。読者それぞれの立場で応用できる良書となっています。

要約

お金をもっと稼ぐよりも、「使い方」を変えたほうがいいのはなぜか

どの書店にも、より多くのお金を稼ぐにはどうしたらいいかを指南する本が書棚に並んでいる。しかし、いま持っているお金をどうやって貯めるかではなく、どうやって使うかを考えれば、幸福になるために無限に富を増やさなければならないという強迫観念から解放されることができる。

多くの人はお金がたくさんあれば幸福になれると考えるが、最近の研究ではその予想とは異なり、富を増やしても、より幸福になれるわけではないことが示されているのだ。

私たちが行ったアメリカ国民を対象にした調査によれば、収入が2万5,000ドルから5万5,000ドルに増えても、2万5,000ドルしか稼いでいない人たちより満足度は9%しか増加しない。

また、ノーベル経済学賞受賞者で行動経済学者のダニエル・カーネマンらの研究によると、アメリカでは、年収が約7万5,000ドルを超えると、それ以上お金を稼いでも、日々感じる幸福にまったく影響が表れないことがわかっている。

別の研究では、お金の写真を見ただけで、孤独な活動を好むようになり、友人との夕食よりも、料理の個人レッスンを選ぶという結果が出ている。富を得ることを考えただけで、人は他人を遠ざけるようになり、幸福を台無しにしてしまう場合があるのだ。

たしかにお金は、おいしい食べ物から安全な住環境まで、あらゆる種類の素晴らしいものを提供してくれる。しかしその富が、いかに私たちを人と一緒に楽しく過ごすといった幸福を増す行動から遠ざけるかを考えてみてほしい。

「ハッピーマネー」の5つの原則

持っているお金を増やそうとするとき、ほとんどの人が、自分の直感に頼るだけでは不十分だと考えるが、お金を使うこととなると、そのお金でどうしたら幸福になれるかを直感で決めてしまうことが多い。

そこで、いつものように5ドルを使う前に、ちょっと時間を取って、「これはハッピーマネー(幸福になるためのお金の使い方)なのだろうか?」「これから使おうとしているお金によって、最大の幸福を得られるだろうか?」と自分に尋ねてほしい。「ハッピーマネー」の5つの原則とは、次のようなものだ。

経験を買う(レクチャー1)

最近の幸福に関する研究では、物質的なもの(美しい家や高級万年筆など)は、経験を買うこと(旅行、コンサート、特別な食事など)ほど幸福をもたらさないことがわかっている。使った金額に関わらず、少々苦痛を伴うような経験でさえ、長く続く喜びの源となるのだ。

ご褒美にする(レクチャー2)
素晴らしいものがいつも身近にあると、人間はそれをあまり大切に思わなくなる。大好きなものに手が届かないように制限をかけると、新鮮な喜びを味わえ、喜ぶ能力が再生されるのだ。

時間を買う(レクチャー3)
裕福な人々は、トイレ掃除から雨どいの清掃まで外注しているが、毎日より幸福に時間を過ごしているわけではない。彼らはせっかくお金を使っても、幸福な時間(他人のために時間を使うなど)を買うことができていない。

お金よりむしろ自分の時間に重点を置くようになると、人々は幸福と人間関係を最優先させるようになる。お金を使う前に、ぜひ「これを買ったら、私の時間の使い方はどんなふうに変わるだろうか?」という質問を自分自身に問いかけてみてほしい。

先に支払って、あとで消費する(レクチャー4)
デジタル技術とクレジットカードは、「いま、手に入れて、あとで支払い」という買い物の仕方をすすめてきたが、これを逆転(「先に支払って、あとで消費する」)させると、あまりお金を使わなくても、より多くの幸福を買うことができる。消費をあとに延ばすことで、期待に満ちたわくわくした気持ちを持ち続けることができるのだ。

他人に投資する(レクチャー5)
他人のためにお金を使うと、自分自身にお金を使うよりももっと大きな幸福感が得られることが証明されている。この原則は、母親にスカーフを買ったカナダの大学生から、友人の子どもの命を救うためにマラリアの診察代を支払ったウガンダの女性まで、広い範囲の状況で成立する。

これらの原則は互いに独立しているわけではなく、1つの買い物に複数の原則を適用することもできる。より多くの原則を適用できれば、より多くの幸福が得られるのだ。

例えば、スターバックスのギフト券は、誰かと一緒にスターバックスに行って、その人にコーヒーを買うために使うときが、最も大きな幸福を私たちに与えてくれる。こうすることで、ただ他人に投資する(レクチャー5)だけでなく、経験を買い(レクチャー1)、その日の時間の過ごし方を豊かにする(レクチャー3)ことができる。

さらに、週の初めにスターバックスのギフト券の代金を先払いし(レクチャー4)、月曜日から木曜日までは普通のコーヒーで我慢して、金曜日にフラペチーノを飲めば、おいしいご褒美(レクチャー2) にありつけるのだ。

コーヒーに関するお金の使い方をこれだけ柔軟に変えられるのなら、人生における多くの買い物にこの5つの原則を適用する可能性は大きく広がるだろう。

なぜ「おあずけ」は楽しみを増加させるのか
喜びから絶望まで、これほど幅広い感情的な反応を経験できるのは、私たちが不確実な未来を心の中で旅することができるからだ。そして心が未来を旅するとき、その世界はたいてい現実とは違って鋭い角が取れて、心地よいものに満ちている。

おそらくほとんどの人が、楽しみにしていたことが予想に反した結果に終わったという経験を持っているはずだ。このようにほとんど毎日、想像したことと実際の経験との間には、比較的小さな亀裂が生じる。

しかし脳はちょっとしたトリックを使って、私たちを助けてくれる。こうした小さなミスマッチが起こると、ポジティブな期待が亀裂を埋めて、私たちに期待どおりに現実を経験させてくれるのである。

バージニア大学の心理学者ティモシー・D・ウィルソンらが行った研究で、ある漫画をとても面白いと参加者に信じ込ませたところ、参加者たちはもっとよく笑うようになった。別の研究では、ある政治家が政治討論で見事なパフォーマンスをすると信じ込まされた人々は、その政治家は体調が悪いと聞かされた人々よりも、彼の話しぶりを肯定的に評価した。

同様に、消費を先送りすると、ポジティブな期待をふくらませる時間が生まれるので、亀裂を埋める能力も高められる。南カリフォルニア大学で行われた研究では、学生たちにテレビゲームをプレーする前に、1分間そのゲームがどのくらい楽しいかを想像するだけで、ゲームをより楽しめることがわかっている。

ボランティア活動をすると会社が儲かる?

2009年、ペプシは23年間続けてきたスーパーボウルでの広告をやめた。その代わり、翌年のスーパーボウルでは、通常2,000万ドルだった広告予算を新しい慈善事業に関連するマーケティングプログラムの資金に回した。

これは「ペプシ・リフレッシュ・プロジェクト」と呼ばれるもので、コミュニティを「リフレッシュする」アイデアを公募し、最も多くの票を集めたものに交付金を与えるという企画だった。驚いたことにこのプロジェクトは、アメリカ大統領選挙よりも多くの票を集め、スーパーボウルの広告を買ったほとんどの会社よりも多くの評判を集めた。

プログラムはペプシの消費者に関心を持ってもらうことを意図したものだったが、プロジェクトチームは、自社の従業員の心にも強力な効果があったことに気が付いた。そこでペプシチームは、ペプシコの社員グループの間で特別なコンテストを行うことにした。

そこでは、各グループが1万ドルの交付金獲得をめざしてアイデアを提出し、全社員に投票する機会を与え、CEOのインドラ・ヌーイが勝者を発表する。その結果、従業員の97%が、このプロジェクトでペプシコという会社に対するプライドを高まったと感じたことが明らかになった。

ペプシ・ビバレッジズ・カンパニー・コミュニケーションズのシニアマネジャー、クリスティーン・ピンクは、「ある従業員が『ペプシコの従業員として30年間働いてきましたが、これほど会社を誇りに思ったことはありません!』と書いてきてくれた」と語った。

会社は従業員のモチベーションを高めるために、能力給や歩合制、そしてボーナスなど「自分のために使えるお金」で報酬を与えればよいという前提の下に成り立っている。だが、チャリティーや同僚に対する行動のために使用できるボーナスを出すことも、有益な代替的手段になり得るのだ。

 

 

 



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