B! ゴロビシャ ネメシスの使い魔

【要約】道は開ける  著者 デール・カーネギー

 

道は開ける 文庫版

 

道は開ける 
 

著者
デール・カーネギー
 
要約
 

本書は、すべての人間に共通する「悩み」の実態とその克服法について述べた本である。著者デール・カーネギーは、コミュニケーション講座の講師をしながら、あらゆる受講生たちにとっての重大問題は「コミュニケーション」と「悩み」であるとしった。しかし当時、「悩み」の解決方法について説かれた本はわずかしかなかった。
そこで、著者は7年もの執筆期間のあいだ、徹底的に「悩み」の実態解明に取り組み、「悩み」についての古今東西の専門書や伝記の読破、インタビュー、さらには学生からのフィードバックなどを通じ、誰よりも多く「いかに悩みを克服したか」という話に耳を傾けてきた。その知識をわかりやすくかみ砕いて整理したのが本書だ。

具体的には、誰もが持つ「悩み」の基本構造やそれを絶つための手法、さらに悩みを完全に克服する方法や、悩みを予防する方法についてまで、詳細な解説がなされている。「悩むとは、無益な円のまわりをグルグル回ること」「過去や未来を思いわずらわない」など、今まさに悩みをかかえる多くの人を救う洞察に満ちた内容となっている。

こうした考え自体は聖書の昔から説かれていることだが、著者がいうように、問題は無知ではなくて無為である。多くの事例と深い人間考察から生まれた内容は、それらの真理の実践まで読者を導いてくれるだろう。本書はその結果、原著発刊後約70年が経った現在も褪せることのない説得力を持ち、世界中でロングセラーとなっているのだ。

要約ダイジェスト

 

悩みに関する基本事項

(1)今日、1日の区切りで生きよ
現代人の生活における最も恐ろしいことの1つは、病院のベッドの半数が、累積した過去の重荷や、不安に満ちた未来に押しつぶされた『神経症や精神的な葛藤に悩む患者たちによって、占められているという事実であろう。

しかし、彼らが《あすのことを思い悩むな》というキリストの言葉や、《今日、1日の区切りで生きよう》というウィリアム・オスラー医学博士の言葉に注意を向けてさえいたら、彼らの大部分は今日も幸福で実り豊かな生活を送ることができたはずなのだ。

オスラー博士が訴えたのは、私たちは明日の準備をする必要はないという意味ではない。明日の準備をする最良の手段は、あらゆる熱情を注ぎ、今日の仕事を今日中に仕上げることであると説いたのだ。これこそ未来に対して準備を整える唯一の方法だ。

明日のことは配慮すべきであり、細心の注意を払って計画し、準備すべきだ。だが、心配するには及ばない。だから、私たちは自分が生きられる時間、言い換えると、今から就寝までの時間を生きるだけで満足しようではないか。

「今日」は、私たちにとって、唯一の確実な所有物だ。自分の生活から悩みを締め出してしまいたいのなら、悩みについて肝に銘じておくべき第1点は、オスラー博士を見倣うことだ。過去と未来を鉄の扉で閉ざし、今日1日の区切りで生きよう。

(2)悩みを解決するための魔術的公式

天才技師ウィリス・H・キャリア氏が実践した方法は、悩みを解決する方法として最善のものだ。彼は若い頃、工場の浄化装置取り付けという何百万ドルの仕事で、予期せぬ障害に直面して眠れぬ夜が続いた。だが、やがて目前の事態に対処する具体的な方法を考えだした。

それは、誰にでもできる3つの段階から成り立っている。まず第1に「状況を率直に分析し、その失敗の結果生じうる最悪の事態を予測すること」。彼の場合、射殺されることはないが、会社を首になるかもしれなかった。

第2に「やむをえない場合には、最悪の事態に従う覚悟をすること」。彼は失職するかもしれないが、そうなれば別の仕事を探せばいいと言い聞かせた。

第3は「最悪の事態を少しでも好転させるように冷静に自分の時間とエネルギーを隼中させること」。彼は、あと5,000ドルかけて付属装置をつければ、問題は起きないと結論付け、これを実行して、会社に2万ドルの損失を与える代りに、1万5,000ドルの利益をもたらした。

人は悩みはじめると、気持ちが動揺して、決断力が失われる。しかし、自分の目を最悪の事態へと向け、心の備えを固めれば、妄想は消え去り、問題解決のため全力を集中できるようになる。最悪のことがらを受け入れてしまえば、どう転んでも「儲けもの」なのだ。

(3)悩みがもたらす副作用を知る

ノーベル医学賞を受賞したアレクシス・カレル博士は「悩みに対する戦略を知らないビジネスマンは若死にする」と述べた。この言葉はメイヨー診療所で胃病の治療を受けた1万5,000人の患者の症例で裏づけられている。

そこでは、5人中4人までが、胃の症状はさまざまであっても、肉体的な原因は見られなかった。不安、悩み、憎しみ、利己主義、現実世界への不適応…これらが胃病や胃潰瘍の主な原因であった。『ライフ』誌によれば、胃潰瘍による死亡は、主要疾患中で第10位だ。

悩みが人間にどんな副作用をもたらすかを見たければ、図書館や医者のところへ行く必要はない。隣近所には、苦悩がもとで神経衰弱患者が出た家もあり、苦悩の果てに主人が糖尿病になってしまった家もある。株式市場の暴落で、血糖や尿糖の値が跳ね上がったのである。

健康で長生きをしたいと願うなら、「悩みに対する戦略を知らないものは若死にする」という言葉を胸に刻み、悩みが健康という名の法外な代償を払っていることを肝に銘じることだ。

悩みを分析する基礎技術
上記の基本事項を知るだけでは、全ての悩みの問題を解決することはできない。人は、次の4段階を踏むことによって、種々雑多な悩みを分析し解決してゆくことが可能となる。

(1)事実を把握する
公平な態度で事実を集め、判断の根拠となる知識を十分に揃えれば、混乱を回避できる。
(2)すべての事実を慎重に比較検討してから、決断する
(3)慎重に決断を下したら、行動に移す。この時、結果についての心配は無用
(4)何かの問題で悩みそうな場合には、次の問いと答えを書き出してみる

・「問題点は何か?」
・「問題の原因は何か?」
・「いく通りの解決策があるとしたら、それらはどんなものか?」
・「望ましい解決策はどれか?」

これは、一流出版社の総支配人だったレオン・シムキンの体験に基づいている。彼は上記の4項目について問いと答えを用意し、あらかじめ提出しておくという規則を社員に課した。その結果、社内全体が相談よりも実行の方に時間を多く割くようになり、無駄な悩みの時間は激減したのである。

悩みの習慣を早期に絶つ

深い悩みに入り込む前に、悩みを早い段階で断ち切るためには、次の6つの鉄則がある。

(1)多忙な毎日によって悩みを追い出す
どんな人間でも、一度に一つのことしか思考できない。同じことは、感情についても当てはまる。劇作家ジョージ・バーナード・ショーは「惨めな気持ちになる秘訣は、自分が幸福であるか否かを考える時間を持つことだ」と述べた。悩みをかかえた人間は、絶望感に打ち負けないために、忙しい状態に身を置く必要があるのだ。

(2)ささいなことで大騒ぎをしない
私たちは大きな災難に立ち向かうことも多いが、ささいな出来事、いわば「気分をいらつかせるもの」を気に病むことも多い。しかし、忘れてもよい小事で心を乱してはならない。多くの場合、小事に煩わされないためには、心の中に新しく愉快な視点をつくることだ。

(3)平均値の法則を利用する
年月がたつにつれて、私は自分が悩んでいたことの 99%は決して起こらないのを知った。たとえば、私は幼い頃稲妻をこわがったが、1年間に落雷で死ぬ人は、35万人に1人にすぎない。「平均値の法則」で自分の悩みが正当かどうかを判断すれば、その9割は解消できる。「不安の種になっている事柄が実際に起こる確率はどのくらいだろうか?」と自問しよう。

(4)避けられない運命には調子を合わせる
どうにもならない不愉快な立場に立たされた時、それを受け入れ自分を順応させることもできるし、反抗して神経衰弱になることもできる。選択は自由だが、避けようのないものに反抗してみたところで、それ自体を変えることはできない。柳のように人生のショックを吸収すれば、潔く生きていけるようになる。

(5)悩みに「ストップ・ロス・オーダー」という歯止めをつける
これは金融から学ぶべきもので、一つの問題に対してどの程度まで気にかけるべきかを決めて、その限度を超えたら忘れてしまうようにすることである。多くの人は悩みに対する価値を見誤り、多すぎる対価を支払っている。

(6)オガクズを挽こうとするな
ノコギリで木を挽(ひ)くことはできるが、オガクズを挽くことはできない。オガクズは挽いた後のカスだからだ。過去についてもこれと同じで、終わったことについてクヨクヨと悩むのは、ちょうどオガクズを挽こうとしているようなものだ。

過去を建設的なものにする方法は、天下広しといえども、ただ一つしかない。それは、忘れ去ることである。「こぼれたミルクを悔やんでも無駄だ」という陳腐なことわざには、あらゆる時代の英知の真髄が含まれているのだ。

平和と幸福をもたらす精神状態を養う方法
私たちが取り組むべき唯一最大の問題は、正しい考え方を選ぶことにある。悩むとは、無益な円のまわりをグルグル回ることなのだ。これは底抜けの楽天家になることではなく、積極的な態度を身につけるということだ。こうした精神状態を養うには、次のような方法がある。

・仕返しは考えない

敵に対して仕返しを考えてはいけない。もしそうすれば、自分自身が敵に支配され、敵を傷つけるよりはるかに多く自分自身を傷つけるだろう。キリストが「自分の敵を愛しなさい」と言ったのは、単に道徳律を説いただけではないのだ。1分でも時間を無駄にしないために、嫌いな人については考えないことにしよう。

・不足しているものでなく、恵まれている点を数えてみる

不足しているものでなく、恵まれている点を数えてみよう。われわれは、自分に備わっているものをほとんど考慮せず、欠けているものについて考える傾向があるが、これこそが最大の悲劇なのだ。

どんな状況であっても、自分が持つ多くの財産に集中すれば、陽気な気持ちを得ることができる。あなたは両眼を 10億ドルで手放すだろうか?両手は?子供は?家族はどうだろう?あなたの財産を合計すれば、たとえ巨大財閥の金塊すべてを積まれても、売り払う気にはなれないことが納得できるはずだ。

・自己を知り、自己に徹する

他人のまねをせず、自己を発見して、自己に徹しよう。ハリウッドの若い俳優や就職希望者は自分以外のものに憧れるあまり、二流三流の模倣者になってしまう。哲学者エマソンが言う通り「嫉妬は無知であり、模倣は自殺」なのだ。

喜劇王チャップリンが初めて映画製作に乗り出したとき、映画監督を委任された人々は、申し合わせたように当時人気を博していた別の喜劇役者のまねをするべきだと主張した。しかし彼が認められるようになったのは、彼ならではの演技をしたときからだ。あなたは、あなたの経験や環境や遺伝が作り上げた作品であるべきなのである。

 

 



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