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【要約】スタンフォード大学 夢をかなえる集中講義 著者 ティナ・シーリグ

スタンフォード大学 夢をかなえる集中講義
 

スタンフォード大学 夢をかなえる集中講義

著者
ティナ・シーリグ
翻訳:高遠裕子
解説:三ツ松新


要約
 

何かアイデアを思いついても、どうやってそれを形にすればよいかわからない…という方は多いはずだ。本書はそんな「ひらめきを形にする方法」を解説する。それは「インベンション・サイクル」と呼ばれ、これまで曖昧だった「想像力」「クリエイティビティ」「イノベーション」「起業家精神」を定義し、アイデア実現までの手順を明確に示す。
著者は「起業」という言葉に怯む必要はないと説く。起業家とは、自分の人生を自ら切り拓こうとする人、少ない資源で想像を超えることを成し遂げる人を指し、まず「やってみる」ことこそ起業家精神なのだ。その意味でも「インベンション・サイクル」は、多くの方がそれぞれの問題解決に応用できる汎用性の高いスキルである。

本書ではこれまでの常識も次々と覆す。例えば「情熱」はリーダーに必須だとされるが、情熱の対象が見つからない方も少なくない。しかし、著者は情熱が行動を生むのではなく、行動し、経験することで情熱が育まれることを明らかにする。各章には課題も用意されており、それを埋めていくだけでも自身の可能性に気づけるはずだ。

著者は『20歳のときに知っておきたかったこと』もベストセラーとなったスタンフォード大学教授のティナ・シーリグ氏。大学では起業家精神アントレプレナーシップ)について教え、スタンフォード・テクノロジーベンチャーズ・プログラムの責任者としても数々の起業家を支援する起業家育成のエキスパートでもある。

要約

ひらめきを形にする「インベンション・サイクル」

私たちは、一人ひとりが自分自身の人生を切り拓き、社会の様々な問題に立ち向かっていかねばならない。そして、そのためには、アイデアを形にするための知識、スキル、心構えが必要だ。そのプロセスが「インベンション・サイクル」、つまり、ひらめきを形にするまでのサイクルだ。

これは、「想像力」を起点に「クリエイティビティ」「イノベーション」を経て「起業家精神」を発揮するまでのプロセスを定義し、その関係を表したものだ。これらの要素の定義は次のようになる。

想像力…存在していないものをイメージする力
クリエイティビティ…想像力を駆使して課題を解決する力
イノベーション…クリエイティビティを発揮して独創的な解決策を編み出すこと
起業家精神イノベーションを活用してアイデアを形にし、人々の想像力をかきたてること
想像力——存在していないものをイメージする
どっぷり浸かる
物事を実現するには、自分が何を達成したいのかを思い描くことから始まる。だが、情熱を傾けられるものを見つけようとする人たちが見落としていることがある。それは、行動して初めて情熱が生まれるのであって、情熱があるから行動するわけではないということだ。

情熱を育むのに、大それたことをする必要はない。レストランのウェイターなら、日々、大勢の客とふれあう機会があり、ユニークな視点から世界を見ることができる。こうした経験からひらめきが生まれるのだ。例えば、食事制限の必要な客の要望を聞いているうちに、そうしたニーズに応えるレストランを開こうと思う可能性もある。

自分に何ができるのかを思い描くためには、まず、一つの世界にどっぷり浸かることが大切だ。遠くから眺めるのではなく、自分から積極的に関わるのだ。どっぷり浸かり、好奇心をもつことで、ぱっと見ただけではわからなかったことが見え、チャンスに気づく。

私たちは、見ているようで何も見ていない。この点に気づいてもらうため、学生に課題を出したことがある。一時間、何もしゃべらず、同じ場所にじっとして、聞こえたこと、見えたことを書き出してもらうというものだ。

学生たちは気づいたことをいくつも挙げ、その過程で、いつもは身のまわりの出来事を観察するチャンスを逃していることに気づいた。この観察力を磨く習慣は、日常生活に取り入れたほうがいい、という程度のものではない。チャンスの扉を開く鍵なのだ。

ビジョンを描く

想像力を発揮するには、イメージする能力が大切だ。私たちは想像力を使って、自分自身の人生の見通しを立てる。だが、個人も企業も、自分たちの事業はここまでだと境界を決めていて、そこからはみ出たものをチャンスだと捉えることができない。

もしグーグルが自分たちの事業をオンライン検索だけに限定していたら、自動運転車を開発することはなかったし、アマゾンが書籍販売しか考えていなければ、インターネット・サービス事業を立ち上げることはなかった。

重要な点は、境界は自分で決めたものに過ぎず、自分で想像できることに限られる、ということだ。レースに出場するにせよ、企業を経営するにせよ、自分がどんなビジョンを描けるかで成し遂げられる成果が決まる。やってみて初めて自信が生まれるのであって、自信があるからやるわけではないのだ。

何か有意義なことを成し遂げたいなら、明確なビジョンをもつことだ。ビジョンは経験と分かちがたく結びついている。これが想像力の本質であり、一つのことに積極的に関わることで、問題とチャンスを見通し、どう対処するかのイメージが湧いてくるのだ。

クリエイティビティ——想像力を駆使して課題を解決する

目標をいくらイメージしても、意欲的に「実験」を繰り返し、目標を達成する方法を見つけなければ、絵に描いた餅で終わってしまう。実験によって「想像力」の段階から、「クリエイティビティ」の段階に移ることができるのだ。

こうした実験を繰り返す方法の一つに、「プロトタイピング」がある。その考え方は「投資する前にテスト」して、製品をつくるかどうかを判断するというものだ。サンプルをつくって検証する「プロトタイプ」の前の段階で、正しい方向に進んでいるかを確認するのである。

プロトタイプにより、数時間から数日の期間とわずかな費用で、貴重なデータを集められる。例えば、写真を識別する高度なプログラムのアイデアなら、まず設計してしまうのではなく、少額のアルバイト料を払って人手で処理し、このサービスが求められているかを確かめるのだ。

新しいアイデアは、失敗する場合が圧倒的に多い。だから、早く試して、方向性を確かめた方がいい。私たちは最終製品を見て、最初から完全な形で作られたと思いがちだが、そうではない。大ヒットしたギャグであれ、洗練された製品であれ、それは実験を繰り返しながら練り上げられた、小さな一歩の積み重ねなのだ。

問題を解決できるかどうかは、絶対に問題を解決するという意欲にかかっている。意欲があれば、様々な方法を試してみようと思い、実験すればデータが集まり、それを見てさらに意欲がかき立てられる。こうしてインスピレーションが大きなアイデアへと育っていくのだ。

イノベーション——独創的な解決策を編み出す
手軽な実験でアイデアを試す意欲があったとしても、的を見据えて「集中」しなければ、長期的な目標が達成されることはない。集中するコツは、そのための時間を捻出することだ。言うは易く行うは難しだが、優先順位が最も高い目標を前面に押し出すのだ。

一日がやるべきことで埋まっていて、どうやって新しい予定を入れればいいのかわからないという人は多い。だが、他の人に任せるか、やめることのできるプロジェクトは常に存在する。集中すれば、鋭いナイフのように頭が冴え、問題の核心に切り込むことができる。それには、時間も心も、意義あるものに割くことが必要なのだ。

人生のあらゆる場面で創造的な問題解決に活用でき、イノベーションのカギのひとつになるのが、「フレーム」を変える力だ。何かにぶつかったとき、それを障害と捉えるのか、チャンスだと捉えるのか、また、どんなアイデアを出すかは、参照するフレーム次第なのだ。

世界を見るフレームを変える方法のひとつは、意識して自分の常識を疑ってみることだ。私がよくやる演習では、まず、ひとつの業界について、当たり前とされていることを挙げてもらう。次に、その常識をひっくり返したらどうなるかを考えてもらう。

例えば、部屋の鍵、ルームサービス、チェックアウトの時間、コンシェルジュといったホテル業界の常識には、疑ってみる余地がある。チェックインとチェックアウトの時間を柔軟にするには何が必要だろうか、24時間好きなときに軽食をつくれるホテルはどうか、など自分たちが常識だと考えることのリストを逆転してみることで、斬新なアイデアを思いつく。

私たちは、過去の経験や現在の心境から引き出した想定をもとに世の中を見ている。こうした想定を疑い、困難はチャンスだと捉え、積極的に視点を変えようとすることで、今までにない斬新なアイデアを生み出すことができるのだ。

起業家精神——アイデアを形にし、人々の想像力をかきたてる
革新的なことを成し遂げるには、粘り強く続けることが必要だ。研究によって、こうした「不屈の精神」が、あらゆる分野で成功を予測する指標として、知能よりもはるかに重要であることが明らかになっている。

心理学者のアンジェラ・ダックワースによれば、苛立ちや間違いは学習のプロセスにつきものであり、それであきらめてはいけないと教えるだけでも、不屈の精神は強化される。単純な物言いが、不屈の精神を養うのに役立つのだ。

前例のない大胆なアイデアは徹底的に叩かれるものだ。それに屈することなく、長期にわたってやり続けられるイノベーターだけが、成功することができる。テスラモーターズは「新しい自動車メーカーを興すなんて本気か?」と疑われ、ツイッターは「140字のメッセージなんて、冗談でしょう」と笑われたことを思い出そう。

また、偉大な成果や功績は、自分一人で成し遂げられるものではない。そのため、周りに自分のやることを応援してもらい、影響力を広げる必要がある。どのように周りを巻き込むのかについて、参考になるモデルがいくつかある。

例えば「増幅型リーダー」だ。彼らは大胆な課題を与え、建設的な議論が活発になされる文化を育て、部下に当事者意識をもたせ、手柄を部下のものにする。こうした一連の行動によってモラルやモチベーションが高まり、飛躍的な成果につながるのだ。

増幅型リーダーの出発点は、有能な人材をチームに引き入れることだ。そのための強力なツールが、ビジョンが明確な説得力ある物語を聴かせることである。たいていの人は、誰かの物語にわくわくしたがっていて、輪のなかに入りたいと願っている。

だから、そもそもこの会社がなぜ存在しているのか、世界はなぜこの会社を必要としているのか、あなたがやっていることはなぜ必要なのか、といった基本的なレベルで物語を語らなければならない。

これは、何も自分のアイデアを全員に気に入ってもらわなければならないということではない。だが、ビジョンが影響力をもつには、熱心な支援者が一定数以上必要だ。だからこそ、周りを巻き込むことが、インベンション・サイクルの重要な要素となる。そして、それによって火がつき、次なるインベンション・サイクルの波につながるのだ。

 

 

 

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