B! ゴロビシャ ネメシスの使い魔

【要約】もっと言ってはいけない 橘玲/著

もっと言ってはいけない

もっと言ってはいけない(新潮新書)



橘玲/著

 

困難は努力で解決できるのか?遺伝の関係とは?

知能は遺伝する、精神疾患は遺伝する、犯罪は遺伝するという主張はタブーとされています。

 

タブーとされている問題には2つの考え方があります。

1つ目は、環境によって人は作られるという考え方である環境決定論です。

この考え方は、その人の困難は努力で乗り越えられるという主張です。

環境決定論では、その人が精一杯努力しても報われないのは、努力が足りないという結論になります。

 

2つ目は、遺伝子がその人の体型や性格を決定するという考え方である遺伝決定論です。

この考え方は、知能や精神疾患等は遺伝が関係しているという主張です。

遺伝決定論では、困難が乗り越えられない原因は努力だけが問題ではないという結論になります。

環境決定論を裏付ける学問、「行動遺伝学」でも同じことがいえます。

行動遺伝学とは、遺伝の影響が身体的・精神的な特徴に及んでいることを明らかにしている学問です。

行動遺伝学でも、「遺伝がその人の全てを決定するということではなく、遺伝の影響は大きい」ということを明らかにしています。

遺伝と精神疾患。 

精神疾患の場合、症状が重いほど遺伝する確率が高くなります。

遺伝率の具体例として、

統合失調症82%、双極性障害83%、ADHD80%と推計されています。

この数字は、親が精神疾患を持っていると約8割の確率で子どもが同じ病気になるということではありません。

遺伝率が身長68%、体重74%と比べてみます。

これは、背の高い親から長身の子どもが生まれる確率よりも、精神疾患が遺伝する確率の方が高いということ。

遺伝:身長68%体重74%<統合失調症82%

この問題は差別の議論になってしまうこともあるため、タブーとされています。

しかし現代の遺伝学からは、これは努力してもどうしようもないことだと明らかにされています。

この現実から目を背けず、本質的な解決策を見つけ出す必要があります
例えば、ADHDの子どもが学校の授業中に教室で走り回ってしまい、教師や他の生徒に迷惑をかけてしまうとします。

そんな時、親が悪い、子育てが悪いと責められてしまうかもしれません。

ADHDの遺伝率は80%であることからわかる通り、子育ての影響はほとんどありません。

努力で変えられないことを努力で変えようとしても無理なのです。

「努力していない」と責め立てると、本人やその親を深く傷つけることになります。

遺伝の事実を知ることで、自分の努力が原因ではないと知ることができます。

環境決定論(何事も努力で変われる)では解決策は見つかりません。

タブー視されている現実を知ることで、救われる人は多いでしょう。

 

日本人の約3分の1は日本語が読めない

国際調査で

「16歳から65歳の成人を対象として、社会生活において成人に求められる能力のうち、読解力、数的思考力、ITを活用した問題解決能力の3分野のスキルの習熟度を測定する」

ことを目的に、調査が実地されました。

その結果、驚愕な事実が判明しました。

1.日本人のおよそ3分の1は日本語が読めない

2.日本人の3分の1以上が小学校3~4年生の数的思考力しかない

3.パソコンを使った基本的な仕事ができる日本人は1割以下しかいない

4.65歳以下の日本の労働力人口のうち、3人に1人がそもそもパソコンを使えない
信じがたい結果ですが、データに基づいた事実なのです。

スマホは使い慣れていても、パソコンになると使えない人はたくさんいるってことだね。
パソコンを使う職場はとても多いでしょう。

定年が延長されている現代で、パソコンを使う仕事をするのは大変だと思います。

この結果を知ることで、日本語が読めない、パソコンが使えないことは特別ではないことを理解してください。

ほとんどの人ができないのです。

急速なテクノロジーの発達に大勢の人がついていけない状態です。

進化していく社会の中で、人の知能はあまり変わっていないという事実がわかりました。

さらに日本語とは、私たちが使う言語であり、コミュニケーションの手段です。

その手段が使えていなかったということなのでしょうか?

日本の成人の約3人に1人が、基礎的読解力を満たしていないのです。

著者・橘さんは、「日本人の3割は昔から教科書が読めない子どもたちだった。そんな中高生が長じて日本語が読めない大人になるのは当然だ」と言っています。

文章で人に伝えるということはとても難しい作業なのです。

【具体例】日本語が読めないとは?
例えば、メールで友人とどこかへ出掛ける予定を立てるとします。

場所と日時を決めるだけのやり取りのはずが、何日も続いてしまうことがありませんか?

それはこちらが送った文章が、相手に伝わっていなかったかもしれません。

自分が相手から聞きたい内容と返ってきた答えが異なり、話がかみ合わない状態になっているのです。

このように、自分が考えている通りに相手へ伝わらないことがあると思います。

日常的に起こるズレが、「日本語が読めない」という結果を確信させます。

差別を正しく理解するためには?
差別はずっと昔からありますよね。

人種や性別などたくさんあるでしょう。

差別はいけないと主張していても「差別とは何なのか」を知らないと、人を差別しないことができません。

差別とは証拠によって合理的に説明できないことをいいます。

2つの主張を例に出してみます。

1つ目は、女性は仕事があると子どもを作らないから社会進出をするべきではない。

これは根拠がないので差別です。

女性の社会進出が少子化の原因になるという根拠はありません。

女性の社会進出がある国と社会進出がない国では、社会進出がある国の方が出生率は高いのです。

女性が家庭に入って子育てをするよりも、保育園等を利用しやすくして働きやすくする方が安心して出産できるのです。

つまり1つ目の主張はデータに反しており、差別ということになります。

2つ目は、男女には仕事の適性が異なるため、女性に合わない仕事がある。

これは根拠があるため差別ではありません。

男女の脳の機能が異なっていることが証明されており、合理的な説明だといえます。

差別をしているかどうかの判断をする際には、証拠によって合理的説明ができるかと考えてみましょう。

自分や他人の発言が差別かどうか明確にわかると思います。

このように差別を正しく理解することで差別をしないという選択ができるのです。

SNSで性別の差別について議論されていることが多いよね。
その際にただの傍観者で終わらせず、差別について考えてみよう!
気になる議論があれば差別なのかそうではないのか根拠に基づいて考えてみましょう。

その考えをSNSで発信するかどうかは個人の自由ですが、考えることが大切なのです。

 「根拠に基づいた主張か・根拠のない主張か」

自分で判断できるようになれば、他人の意見に流されずにいられます

 

1. 人には「暗黙知」という機能がある

人間が無意識に行なっていることの具体例として、以下の実験があります。

テーブルの上にカードの山が4つ置かれ、参加者は何の情報も与えられずにそこから順番にカードを引いていく。

AとBのカードの束は、ゲームを続けていれば全体として大儲けするか大損するかのいずれかに。

CとDのカードの束は儲けも損も小さいが、続ければ確実に儲けられるという設定になっていたとします。

驚くべきことにほとんどの参加者は4つの束すべてを引いているうちにCとDの束からカードを引いて、Aと Bの束を避けるようになったのです。

“なぜ自分がそのような選択をしたのか”を、説明することができないにも関わらず。

そこで、被験者の皮膚電動反応(指先などのわずかな発汗)を調べたところ、参加者がAとBの束からカードを引こうか迷っている時に、皮膚電動反応に顕著な増加が見られたのです。

これは緊張や恐怖の合図が、何らかの方法で脳から指先に「この選択は間違っている!」という信号が送られたことを示しています。

意識がトランプの魂の違いに気づく前に、無意識はAとBの束が危険であるということを、直感によって知らせていたのです。

私たちは生きのびるために、進化の過程でこのような直感を獲得しました。

この無意識の知能を「暗黙知」と呼びましょう。

昔ながらの家内工業的ものづくりにおいても、多数の労働者が複雑な連携作業を行う中で、この意識できない職人の暗黙知的なものが重要な役割を果たしていたはずです。

 

2. 単純労働者はどこにいくのか?

知識社会が高度化するにつれて職人の知恵はマニュアル化され、アルゴリズムに置き換えられていきます。

マニュアルさえできれば、労働者はそれに従って作業すればいいだけで、人件費の安い新興国に工場を作った方が利益は大きくになります。

さらにプログラム化が可能な仕事は、そもそも人間を使う必要がなくなり、機械に24時間365日にやらせればよくなります。

今後、今まで暗黙知に頼っていた仕事が機械化されることによって、直感に頼っていた職人の仕事がなくなっていきます。

AIなどのテクノロジーの急速な発展によって労働者に要求される知能のハードルは上がり続けており、字が読めない、パソコンが使えないといった人たちに仕事がなくなることは避けられません。

私たちが今生きている日本の超高齢化社会において、知識社会に適用した人は成人人口のおよそ13%しかいないことが調査により明らかになっています。

残りの87%は程度の差はあれど、適用に何らかの困難を生じていることになります。

大半の労働者は、知的作業が要求するスキルを満たしていない。

これが、私たちの生きている世界の事実です。

ではこの悲しい現実に私たちはどのように対処していけばいいのでしょうか?

実は、解決策がまだ見つかっていません。

世界中の国が格差をなくす努力や政策を試みていますが、格差は広がり続けています。

 

3. ラテン系の人たちは、なぜ明るいのか?

ここからは、日本人はひ弱なランという話を解説します。

私たち日本人は、アフリカ系やヨーロッパ系の人々と比べて、不安感が強いイメージがありませんか?

アフリカ系やヨーロッパ系の人って、何か底抜けに明るい感じがしますよね。

なぜこのような違いがあるかというと、セロトニン運搬遺伝子に違いがあるからです。

この運搬遺伝子はセロトニンの量を決める遺伝子で、LL型とSL型、SS型の3種類があります。

そしてLL型が最もセロトニンの量が多く、SL型が次に多く、SS型は一番少ないということがわかっています。

セロトニンの量が多ければ多いほど楽観的になり、少なければ不安感が大きくになります。

そして日本人はSS型が65.3%、SL型が30.7%、LL型はわずか4%しかいないです。

SS型というのは一番セロトニンの量が少ない、そしてセロトニンの量が少なければ不安感が大きくになるんです。

これが日本人はアフリカ系やヨーロッパ系と比べて、不安感が大きいと言われる理由です。

そして日本人の大半が持っているSS型のセロトニンの遺伝子は不安感を強めるというよりも、ポジティブな刺激に対してもネガティブな刺激に対しても強い感受性を持つ遺伝子だということが最近分かってきました。

要するに日本人は敏感で、ヨーロッパやアフリカ系の人たちは鈍感であると言われております。

4. 日本人はひ弱な蘭

現在の進化論では、セロトニン運搬遺伝子の違いを蘭(ラン)とたんぽぽの比喩で説明しています。

アフリカ系ヨーロッパ系の人々はたんぽぽで、日本人は蘭です。

タンポポはストレスのある環境でもたくましく育ちますが、その花は小さく、目立ちません。

一方で蘭は、ストレスを加えられるとすぐに枯れてしまうものの、最適な環境下では大輪の花を咲かせます。

つまり日本人は特定の環境下では大きな幸福感を得ることができるが、それ以外の環境ではあっさりと枯れてしまうメンタルということです。

このことから、私たち日本人がとるべき行動が分かります。

それは、不要なストレスを避ける場所に移ることです。

合わない上司やブラックな環境にいると、日本人は敏感だからすぐに枯れてしまいます。

私たちはひ弱なラン何だということを認識して、辛すぎる環境を我慢してうつ病や自殺するといったことになる前に、自分が花を咲かせられる場所に移るのが得策です。

 

 

 

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